2024ライチウス三田会総会報告

| 2024年12月15日

〇10月19日、ライチウス三田会総会が開催されました

今年度の総会を三田キャンパスで開催しました。第一部は本館102教室で定例議事・講演会・グループ懇談を行い、第二部は山食にて懇親会です。
来賓、会員の参加は45名、現役学生の参加は18名の合計63名でした。

参加者集合写真

【第一部 総会】

定例議事

規約にしたがい次のことが承認されました
・2023年度会計報告並びに監査報告

現役活動紹介

紹介をする横田さん

会の中では最も新しいパート「アフリカンキッズクラブ」の活動が紹介されました。この活動は会OGの津山直子さん(日本アフリカ協会副代表)の仲立ちで3年前から始まりました。日本に住むアフリカ系の子どもたちに主としてオンラインによる学習指導や生活相談を行っています。受験勉強の支援、学校生活での困りごとへのアドバイス等が行われています。




ANA工場見学会報告

報告をする清水さん

ANA職員および羽田整備工場の方々のご協力を得て、ライチウス三田会幹事清水信三さんの企画で7月に行われた見学会の報告です。至誠学舎の3つの児童養護施設の希望者に対して行われました。質疑では現役機長に対して給与額が尋ねられるなど子どもらしい反応が見られました。当日、参加者が食べた機内食ですがANA職員も簡単には食べられないこと、季節柄提供には神経を使ったことなどの裏話が紹介されました。

参加した至誠学園の子ども、職員、ライチウス関係者は体験を通して充実した一日を過ごすことができました。

講演会

講師:齋藤真貴 NHK報道局 社会番組部 チーフ・プロデューサー

NHK齋藤真貴さん(東京大学医学部健康科学・看護学科卒業)に講演をしていただきました。以下は齋藤さんの監修を得て講演の要旨をまとめたものです。

講演 「ケアするメディア〟を目指して」

~NHK『発達障害キャンペーン』『病院ラジオ』の取り組みから~

 最近、「ケア」と「メディア」を接続しようとする試みが始まっています。研究している学者もいます。メディアがケアすることは可能なのか。ケアするメディアとは何なのか。番組作りを通して現場から見えてきたもの、大切だと感じたことをお話したいと思います。                                  

 私は大学時代、看護師を目指し、3年生の後期から病院で看護実習の日々を送っていました。患者さんと向き合うなかで考えていたことは、個人への看護のアプローチをもっと多くの人に広げられないかということでした。友達にセミナーに誘われ、その流れで受けたNHKの面接では、「社会を看護したい!」と話したことを覚えています。最近になって「ケアするメディア」という言葉が登場し、私がずっと目指していたものに近いのではと感じました。言葉ができることによって、今まで大事にしていたものが浮かび上がってきたとも言えると思います。

 就職後、ディレクターとしてさまざまな番組を制作しましたが、そのとき、特に力を入れていたのは、生活情報番組のなかで医療や健康について企画を出すことでした。例えば、「生活ほっとモーニング」では、2004年2月に「無理解をなくそう 統合失調症」という3回シリーズを企画。かつて「精神分裂病」と呼ばれ、差別や偏見が根強くあった統合失調症を、本人や家族はどう受け止めればよいのか、地域で支えるにはどうしたらいいかなどを、当事者や家族、専門家とともに考えました。画期的だったと思うのが、統合失調症の当事者の方に、生放送のスタジオにご出演いただき、自分の言葉で思いを率直に語ってもらったことでした。当事者の声に耳を傾け、「当事者視点」「当事者意識」を持つことの大切さを強く感じました。

 その後、プロデューサーになり、「あさイチ」で発達障害を定期的に取り上げました。放送するたびに、番組には視聴者から数多くのメールやFAXが届き、大きな手応えをつかみましたが、その一方で、「あさイチ」だけで伝えていていいのかという疑問もありました。平日の朝にテレビをつけられる人にしか届かないからです。そこで、取り組んだのが、キャンペーンとして、NHKのさまざまな番組が連携して、発達障害をとりあげ、多くの人に何らかの番組で触れてもらうという作戦でした。発達障害は、周囲の理解次第では「障害」にならないという場面も数多くあるからです。

 その中心となる番組が、2017年5月放送のNHKスペシャル「発達障害 解明される未知の世界」でした。最新の研究結果や、当事者の視点で本人は何に困っているのかを生放送で伝えました。番組に寄せられたメールやFAXは約5700に上り、放送後にもインターネットでストリーミング配信を行い、寄せられた声をできるだけ多くお届けしました。意見を言い合える「広場」としての情報空間を作る「双方向性」も、とても大事なポイントだと改めて感じました。

 そして、さらに挑戦したのが、既存の番組ではなく、新たな番組を作ることでした。それが、今も放送を続けている「病院ラジオ」です。番組の特徴は、ナレーションがなく、必要以上のテロップもないこと。登場する人の名前も、病名もその説明も、テロップはありません。メディアには、コンテンツに十分情報が満たされた状態で届けられる「ホットメディア」と、情報は多くないが受け手の想像や参加を必要とする「クールメディア」があります。後者の代表例がラジオです。「想像する」ことは「他者を理解しようとする」ことにつながります。「病院ラジオ」は、語り手に思いを馳せることができるラジオのよいところを、テレビとして生かした番組なのかもしれません。こうした「思いをつなげる(共感)」ことも、大切なポイントなのかと思います。

 以上の番組制作の経験から、もし「ケアするメディア」を定義するとしたら、私は「一人ひとりが持つ生きる力を引き出すメディア」であると考えます。ナイチンゲールの「看護覚え書」にもある看護の中心的思想は、「人が持っている力を引き出す」ことです。人にはそれぞれ自分自身で良くなる力があり、そのための環境を整えたり、きっかけを与えたりすることが大事ということです。私はこうした「ケアするメディア」をこれからも追い求めていきたいと思います。そして、みなさんが「ケアするメディア」を活用することで、もっと元気になり、もっと幸せになれたら嬉しいなと思っています。                                                   

(以上)

《参加者感想》

(OB Kさん)・印象的だったのは講演会の内容で、私の身近でもそのような人がおり、今後の寄り添い方などとても参考になりました、というより助かりました。

(OB Tさん)・齋藤さんの講演はライチとの親和性もあり面白く興味深く拝聴しました。

(現役2年 Sさん)・齋藤さんのご講演によってたくさんの新たな視点を学ぶことができた。マスメディアでは情報は一方向であることが当たり前と思っていた。たしかに双方向でやりとりができることによって私たちのような一般の人も自分の意見を取り上げていただけるということで、より番組に対する関心も上がるように感じた。私は、NHKで障害に関する番組を目にすることが多いように感じていたが、それは番組を放映する時間帯やターゲットを分析されてのものだったことが興味深かった。

(現役3年 Kさん)・看護を学んでこられたご自身の経験を活かして、目標(社会を看護する)を長い時間をかけて実現されたこと、発達障害プロジェクトを実施されたその意志の強さに感銘を受けました。また、普段見ているテレビ番組の背景を知ることができて純粋に面白かったです。私は病院ラジオの不思議な温かさが好きなのですが、出演者の温かさを引き出していたのが、正にクールメディアの力なのかと思いました。

(現役4年 Nさん)・普段あまり知る機会のないテレビ番組制作の裏側について聞くことができ、大変勉強になりました。特に「ケアするメディア」を目指す中で、当事者の視点を大切にされている姿勢が強く伝わってきました。目の前の相手に寄り添いながら番組を制作することで、結果として大衆の心を動かすことができるマスメディアの力とその可能性を大いに実感することができました。今回のお話をきっかけに、今後は作り手の意図や視点などにも意識を向けながらテレビを見ることで、これまで以上にテレビを楽しめるのではないかと感じました。

グループ懇談

講演の後、参加者は4つのグループに分かれてグループ懇談に移りました。
グループの進行を前もって4名の方々お願いしました。進行により懇談は明るい雰囲気で円滑に進められ年代を越えた会員と現役生との交流ができました。また、ご厚意で齋藤さんを囲むグループを設けさせていただきました。

Aグループ 「A大学教育とライチ」 進行:清水信三さん(S55)(清水さんメモより)
・新しいつながりを求めて児童ボランティアに入った。担当する子どもが代わることによって成長を感じた。
・老人ホームや学園等で清掃活動等のイメージだったが違った。子どもとの交流を模索中。
・小さいときからさまざまな活動に携わってきたが「輪」の広がりを感じる。
・就職活動では組織運営に関わったことを含めて十分に話ができると思う。
・ライチの経験が社会人になってもいろいろな場面で活きる。年齢を重ねても様々な形で社会の中で活かせる。

Bグループ 「ボランティア活動」 進行:津山直子さん(S59)(参加者Sさんのメモより)

○ライチの経験が活かされていることは?
・双方向性のものの見方が拡がった。
・障害者施設に関わったことがなかったから交流のきっかけができて特別感がなくなった。
・齋藤さんの講演から子ども自身の立場に立った見方が大切だと思った。
○卒業時に進路は決まっていたのか? 
・スウェーデン留学から学んだ弱者
・人道支援の視点が就職に繋がった。
○高3の子どもの受験
・学習支援、進路の希望がかなわなかったことでどのような対応をしたら良いか?
・奨学金、浪人に関してどんなサポートができるか→いろいろな条件
・情報を集めること。サポートは自分だけと思わないこと。本人の気持ちを受け止めること。

Cグループの懇談 「ライチに望むこと」 進行:矢崎芽生さん(H12) (参加者Kさんのメモより)

○ライチ入会の動機など
・以前発達障害者支援を行っていたがコロナ禍でふれあう機会が減り、ライチに入会した。塾講師をしているが関わりは表面的。ライチの一員としての関わりは深い。
・悩みは学力のサポートと人間的つながりの両立で信頼感は不可欠。

Dグループの懇談 「斎藤氏を交えて」 進行:森田幸史さん(S55)(参加者Yさんのメモより)

○講演の感想
・当事者視点 これが仕事をする上で大切と再認識。
・当事者視点、寄り添う、双方向、ライチの活動でも大切なキーワード。
・病院ラジオを楽しみにしている 難病の子など病気の理解にメディアの力は大きい。 
○斎藤氏から
・当事者理解は難しい。先入観を持ちすぎずひたすら聞くこと。「なぜこのような行動をするのか、困っているのでは」と考えることが大切。病院ラジオ、サンドイッチマンは“聞くのみ”
・番組を見ていない人にも伝えるには? →ドラマ、映画、インターネットで全文紹介、YouTubeでダイジェスト、NHKプラス、あの手この手で試すが正解はない。
・Q:障害者の企業での雇用義務が多様性に繋がるが効率化を求める現場では難しいのでは。→A:いろいろな障害の程度がある。発達障害者の働きやすい現場は健常者にとっても良い場合もある。自閉症スペクトラムの人が得意な作業もあり、すべてが弱点ではなく活かすこともできる。いいところを見て伸ばして活かす。口で言うのは簡単だが・・・。

《参加者感想》

(現役 Kさん)・普段改まって聞くことがなかった現役の先輩や同期の意識を知ることができました。OBの方々のライチ入会動機や就活のお話なども伺うことができて勝手ながら親近感のようなものが湧いてしまいました。

(現役 Sさん)・自身のボランティア活動での悩み事を相談する機会があり様々な先輩方のご意見をいただけたことが良かった。

【第二部 懇親会】

・山食で、懇親会を実施しました。元会長坪川さんのご挨拶の後、現役生代表進藤さんの挨拶と三田祭の告知がありました。
・OB小山さんのご発声で乾杯が行われ、懇親会が開始されました。
・講演をしていただいた齋藤さんにも参加していただき、OB、現役学生と気さくに交流していただきました。
・ライチOBである喜多酒造社長・喜多良道さん(S53)に日本酒を提供していただきました。日本酒の甘口・辛口の区別ができる2種類の「喜楽長」でした。
・レトルト食品として一般にも販売されている「山食のカレー」が懐かしさもあり好評でした。
・昭和53年当時、至誠学園のみの定期活動の場を世田谷更生館(現 友愛園)に広げた会員の一人半田さんから当時の様子をお話ししていただきました。

・昨年度の卒業生安田さん、竹島さんの2名が三田会新会員として紹介されました。現役生から昭和卒業の会員まで老若男女が年齢の差を超えて楽しく交流しました。

 参加者感想》

(OB Sさん)・久方ぶりに再会したOBOGどうし、またOBOGと現役生が自由に語り合う時間は、なにものにも代えがたい大切なひとときだと思います。

今回OBの半田さんが現在活動されているSDGsの会の紹介をしてくださいました。このお話の続きを半田さんと現役生がさらに個人的に行って議論を深めている光景を目にしました。このような場を今後も作っていただけたらとても有意義と考えます。

(現役1年Kさん)・緊張してあまり話をすることができなかったが、多様なバックグラウンドを持つ方々のライチの活動の話や働かれている業界の話を聞くことができた貴重な機会となり、改めて自分のことについても深く考えるきっかけとなった。

(現役1年?さん)・普段お会い出来ないようなライチOBの方とお話しすることができてとても楽しかったです。特に、ライチで知り合って仲良くなり、たとえ結婚や子供が産まれて疎遠になっても、50年後昔と同じように、昨日会ったように話せる関係性を大学生活で築いた、という話は素敵で、私もそんな風に何十年後も仲良くいられるような、そんな友達をライチウスで作ることができたらいいなと思いました。来年2年生になるので、自分の興味のある分野の職業のお話来年こそはお聞きしたいと、思いました。今は福祉関係の仕事に興味があるので、今後色々なOB の方の貴重なお話聞かせていただければいいなと思っています。来年もぜひ参加したいです! 

最後、「若き血」を斉唱したのがとても印象深かったです。何年も前に慶應を卒業されたOBの方々が歌詞を忘れずに大きな声で現役生と肩を組んで楽しく歌う中で自分がライチに入会して、この場に参加できたこと、とても誇らしく嬉しく思いました。 今後も先輩や同級生、ライチ三田会の方々とのご縁を大切にさらにいっそう活動に力を入れていきたいなと思いました。 

(現役2年Kさん)・OBOGの方々から過去の活動についてお聞きすることができました。同じ定期活動の施設に通っておられた方の当時の活動内容や夏合宿のお話、ライチ以外では文学部の専攻や就活についてまで相談に乗っていただき感謝の気持ちでいっぱいです。普段お会いする ことのできない方と交流できました。 

(現役4年Nさん)・普段なかなか交流できない三田会の方々とお話しする機会があり、非常に楽しい時間を過ごすことができました。自分自身も多くの刺激を受け、とても良い機会だったと感じています。 

(現役2年Sさん)・自身の将来について様々アドバイスをいただけたことが貴重だった。参加した1年生も大変楽しんでいたので、 来年もし参加のハードルが高く感じている下級生がいた場合は参加の後押しをしたい。

〇山崎弘義さん(S55卒 写真家)に写真の撮影をお願いしました。

〇総会に先立ちご逝去された会員9名が紹介されて黙祷が捧げられました。

〇総会を終えて

講演、グループ懇談、懇親会と中身が充実した総会になりました。総会は13:00~18:00という長丁場になるため、1部・2部構成で部の参加自由としました。せっかく半日お付き合いいただくのだから、楽しさとともに、知的な心に残るお土産を持ち帰っていただきたいとコロナ後の一昨年の総会から講演を行っています。

今年の講演は、かつて半田会長が番組に出演したご縁からNHKプロデューサー齋藤さんにお願いしました。ご多忙中にもかかわらず快く引き受けていただきました。当日は午前中から会場入りし、機器の調整等の準備をしていただきました。映像も用意して、番組制作の意図をわかりやすく示していただきました。OBが感想で「ライチウス会の活動と親和性がある」と書いていましたが、会にふさわしい内容だったと思います。さらにグループ懇談、懇親会にも参加して、現役生、会員と親しくお話ししていただきました。映像の中で若き日の半田会長の姿を見せていただいたことに、氏のユーモアを感じました。

NHK齋藤さま、ライチウス三田会・ライチウス会会員のみなさまのご協力に感謝申し上げます。                  

幹事長 鈴木由之